「やらされ勉強」から「自分ごと勉強」へ

「やらされ勉強」から「自分ごと勉強」へ―― 中学生が変わる瞬間と大人の役割

「勉強なんて面倒くさい!」
「塾には行きたくない!」
と反抗的だった中学生が、
ある日、自ら自習室にやって来て机に向かい、解けない問題を質問し、
さらに「今日のプリントをもう1枚ください」と前向きになった。

私たちは、そんな劇的な変化を幾度となく目にしてきました。
保護者の方々からすれば、まるで魔法のように思えるかもしれませんが、
実際には“心のスイッチ”が入った瞬間が必ず存在します。

そのスイッチを押す鍵は、子ども自身が「自分で決めた」「自分で動いた」という実感を得ることです。

心理学の自己決定理論(Deci & Ryan, 2000)によれば、
人は〈自律性〉〈有能感〉〈関係性〉という3つの欲求が満たされると内発的な動機づけが高まり、
行動が「やらされ感」から「やりがい」へと転換しやすくなると言われています。


実際、私たちが“変わる子”に共通して感じるのは
「わからないを放置したくない」「もっと解けるようになりたい」
「志望校に行きたいから勉強したい!」という内側から湧く意欲です。

親や先生の「勉強しなさい」という外側の圧力ではなく、
本人の中にスイッチが入ったとき、学習姿勢は見違えるほど前向きになります。

では大人は何をしてきっかけを支えればよいのでしょうか。
第一に「口を挟む前に少し待つ」ことです。
不安や焦りから「こうしなさい」と指示を出したくなりますが、
その5秒をこらえるだけで、子どもが自分なりの一手を考え始めることがあります。

第二に、結果よりもプロセスを認める姿勢です。
「追加プリントを頼んだ勇気」「質問に来た行動」など、
行動の価値を言葉で伝えるだけで、子どもの“有能感”は大きく満たされます。

第三に、提案はあくまでも選択肢として渡すこと。
「今日は塾で復習する? それとも家でこのページを進めてみる?」と問いかければ、
最終的に自分で選んだという感覚が残ります。

もちろん、私たち大人にも葛藤があります。
「もっとこうしたほうがいい」と確信できる場面で黙って見守るのは簡単ではありません。
私たち講師も、つい指示を出し過ぎては反省し、また最適な距離感を模索する日々です。
それでも、子どもが自分の意思で一歩を踏み出し、失敗しながらも軌道修正していく姿を見守ることこそが、
将来にわたって彼らを支える本当の力になると信じています。

ユニバースクールの教室では、受験生を中心に「やらされ勉強」を卒業し、
自分ごとの学びへ歩み始めた生徒がこれまでたくさんいます。

私たちは、その変化の瞬間に立ち会えることを喜びに感じながら、毎年、彼らのサポートを続けています。

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