「欲しい」と「買う」は違う?筑波大学の先生に聞いた「デザイナーという仕事」|高校生 未来デザイン講座

デザイナーに必要なのは「国語」!? 高校生 未来デザイン講座

「この中で、もうデザイナーになりたいって思ってる人、います?」

授業の最初に、講師の先生がこう聞きました。手を挙げた高校生は、ゼロ。先生も「いませんよね」と笑っていました。学校にはデザインの授業がありません。美術はあっても、デザインという仕事を知る機会はほとんどないんですよね。

9月19日、高校生向けのキャリア教育「未来デザイン講座」に、ゲスト講師として筑波大学 芸術系 准教授の山田博之先生をお招きしました。テーマは「デザイナーという仕事」です。先生は「終わった頃には、私もデザイナーになろうかなと思えるように」と話を始めてくれました。

授業の様子は、7分のダイジェスト動画にまとめています。

目次

講師の山田博之先生

山田先生は、筑波大学の芸術専門学群を卒業したあと、三菱自動車で車のデザインを担当していました。その後、大学院に進み、在学中にIT企業を起業。オンラインの学習システムなどをつくる会社で、2024年まで取締役を務めていました。いまは筑波大学で、デザインや感性科学(人が何かを見て「おいしそう」「使いやすそう」と感じる仕組みを、数字で説明する研究)に取り組んでいます。

自動車デザイナー、会社の経営者、大学の研究者。3つの立場からデザインを見てきた先生です。

授業レポート:「いい道具」「悪い道具」から始まった

最初に先生が出したお題は、「毎日使う道具の中で、いいなと思うもの、嫌だなと思うものは?」。高校生一人ひとりに聞いていきました。

「紙の本。知識がずっと頭に残るから」という答えには、先生がすかさず研究の話を返します。画面は後ろから光る「透過光」、紙は光がはね返る「反射光」。誤字を探す作業は、紙のほうが見つかりやすいそうです。

「金属の定規。丈夫だけど、落としたときの音が大きくてうるさい」。買った理由を聞かれると「かっこいいから」。教室に笑いが起きました。先生は「買おうと思ったときはこうだったけど、使ってみたらいまいち。やっぱり道具は使ってみないと分からない」とまとめます。

ここから、授業の本題に入りました。

デザインは「見た目」だけの仕事じゃない

デザインの語源は、ラテン語の「デシグナーレ(designare)」。計画を記号に表す、つまり「設計する」という意味だそうです。見た目をつくる仕事をしているデザイナーは、全体の2〜3割くらいではないか、と先生は話していました。

機械や工場がつくるものと、それを使う人。その間にある「使ってみたら、いまいち」をなくすのがデザイナーの仕事です。先生はこれを、技術と人との「接点」を調整する仕事、と表現していました。

水道のレバーは、なぜ「上げると水が出る」のか

いちばん盛り上がったのが、この問題でした。いまの水道のレバーは、ほとんどが「上げると水が出る」タイプです。でも、水は下に流れるもの。下げて出るほうが直感的な気もします。実際、昔は「下げると出る」タイプもありました。1990年代の後半から、上げて出すタイプに変わっていったそうです。

「なんでだと思う?」という問いに、高校生の一人が「地震で物が落ちて、レバーが下がって…」と答えました。正解です。阪神淡路大震災のとき、落ちてきた物がレバーを押し下げて、水が出っぱなしになることが分かった。それがきっかけだそうです。

ふだん何も考えずに触っているものにも、誰かが考えた理由がある。そう知るだけで、身の回りの見え方が少し変わります。

「欲しい」と「買う」は違う。白いお皿の実験

先生の専門である感性科学の話で、印象に残った実験があります。

ある食器メーカーが、いろいろなデザインのお皿を並べて「どれがおいしそうに見えますか?」と聞く実験をしました。黒いお皿や、変わった形のお皿もあります。

実はこの実験、本当の目的は別にありました。最後に「今日見たお皿の中から、どれでも1枚持って帰っていいですよ」と伝えたんです。すると、みんなが選んだのは、パン屋さんのキャンペーンでもらえるような白いお皿でした。かっこいいお皿が、たくさんあったのに。

みんなが欲しいって思うものと、実際に買うものっていうのは、違ってる

人は、口で言うことと実際にやることが違う。それを実験で明らかにするのが、先生の専門の感性科学という分野です。保護者の方にも、思い当たることがあるかもしれません。

進路のヒント① デザイナーにこそ「国語」が大事

高校生にとって、いちばん身近だったのはこの話だと思います。

デザイナーに必要な力として、先生は「描く・考える・伝える・道具を使う・まとめる」の5つを挙げました。高校の教科でいえば、美術、情報、数学、国語、理科。全部を使う仕事です。

絵については「絵を描くのは筋トレと一緒」。ある程度描けないと、考えをすばやく人に見せられない。だから早めに練習しておくといい、という話でした。

そのうえで、先生が特に強調したのが国語です。日本の国語の授業は読むことが中心ですが、海外では作文やプレゼンテーションも国語に入る。いまはAIに指示を出すにも、正しく文章で伝える力がいる。先生は、英語は5年か10年で自動翻訳が当たり前になると考えているそうです。でも国語は、自分の頭の中にあるものを外に出すための道具だから、しっかりやったほうがいい。

デザインの先生が「英語より国語」と言うのは意外でした。でも、考えたことを言葉にする力は、デザイナーに限らず、どんな仕事でも土台になる力です。

進路のヒント② 大学は「先生」で選ぶ

授業の最後には、デザインを学べる大学の探し方も教えてくれました。

デザインのコースは、芸術系の学部にも、工学部にもあります。調べるときのコツは、大学の名前で決めるのではなく、そこにいる先生が何を専門にしているかを見ること。その先生の研究が、自分の興味と重なるかどうか。先生は「これはデザインに限った話ではない」とも話していました。

高校生の進路選びは、どうしても大学名や偏差値から入りがちです。「そこで誰に、何を学べるか」から考える視点は、保護者の方にもぜひ知っておいてほしいと思いました。

もうひとつ。デザイナーに向いているのは、身の回りの道具に「ここ、使いづらいな」と不満を持てる人だそうです。嫌だなと思ったら「これは誰のためのデザインだったんだろう」と考えてみる。授業はそんな言葉で締めくくられました。

ユニバースクールが、この講座を続ける理由

5科目の勉強は、もちろん大切です。成績を上げることは、僕らの大事な仕事です。

そのうえで、その先にある「自分で考えて、選んで、進む力」も一緒に育てたいと思っています。進路は、偏差値だけで決めるものではありません。実際に社会で働いている大人の話を直接聞くと、世の中にどんな仕事があるのか、いまの勉強がどうつながっていくのかが見えてきます。

今回も、デザインの話のはずが、国語、数学、理科、美術、情報と、高校で学んでいることが次々につながっていきました。「なんで勉強するの?」の答えのひとつが、こういう時間の中にあると思っています。

未来デザイン講座を始めた理由は、「この授業、嫌い!」という声も。未来デザイン講座を僕らが続ける理由にも書いています。あわせて読んでいただけたらうれしいです。

山田先生、高校生のために貴重なお話をありがとうございました!


ユニバースクールは、宮崎台・宮前平の学習塾です。キャリア教育(未来デザイン講座)の取り組みも、ぜひご覧ください。教室の雰囲気が気になった方は、無料体験でのぞきに来てください。お問い合わせフォーム・公式LINEからお気軽にどうぞ。

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